正しい呼吸で整えよう

お知らせ

呼吸と姿勢

1日に行っている呼吸は、約3万回にも及びます。ですが、猫背、巻き肩、脚を組みながらのスマホを長時間覗いているそんな習慣の人は要注意です。

不良姿勢では、上手に吸えていると思いますか?吐けていると思いますか?

呼吸と姿勢を正すことは、丈夫なカラダを手に入れるには必ず意識しなければいけないことです。

人は産まれた瞬間から、無意識に息を吸って吐くという呼吸を自然に身につけ、当たり前のように繰り返しています。

息を吸うのは、エネルギーを作るために必要な酸素を血液中に取り込み、全身に運ぶためです。息を吐くのは、酸素を受け取った各細胞が代謝を行うことで発生する二酸化炭素を外に出すためです。

呼吸が止まるということは死を意味することです。

生きている限り、朝起きてから夜眠って次の朝また起きるまで、一日24時間呼吸を繰り返しているわけですが、これは肺が勝手に膨らんだり縮んだりしているわけではありません。

呼吸のシステムは、実は運動によってなり立っています。

呼吸に関わっている筋肉を一般的に呼吸筋と呼びます。息を吐くときに収縮する筋肉と吸うときに収縮する筋肉の2種類があります。前者が呼息筋、後者が吸息筋です。

上の図をご覧の通り、こららの筋肉の役割の一つは、肋骨によって構成される胸郭を広げたり縮めたりすることです。例えば内肋間筋が収縮をして胸郭が狭くなると息が吐き出され、外肋間筋が収縮すると胸郭が広がって息がカラダに入るという仕組みです。

無意識に行っている呼吸は、たくさんの筋肉が収縮や弛緩を繰り返すことによって支えられています。

1回の呼吸でカラダに取り組む空気、換気量は安静時で約500ml。ペットボトル1本分です。このうちのおよそ150mlは死腔という気道のデットスペースに留まり、酸素と二酸化炭素のガス交換とは関係なしに排出されます。

脳は酸素と二酸化炭素の量を常にモニターしていて、特に二酸化炭素の量に敏感です。二酸化炭素が多すぎるとカラダは酸性に傾き、逆に少なすぎるとアルカリ性に傾きます。

ガス交換の効率が悪いと、PHはどちらかに傾くことになる。そこで脳はカラダに『もっと呼吸をせよ』と指令を出します。そこで換気量が少ない場合、呼吸数は通常の倍。

呼息筋、吸息筋への負担が大きくなるということです。

脊柱起立筋と腹横筋は呼吸と姿勢の要

4〜5kgの重量がある頭をてっぺんに持っていき、2本の脚でしっかりと立つためには、それなりの骨格のシステムが必要です。

骨盤が立ち、脊柱が地面に対して垂直になります。そのままではグラグラしてバランスが取れないので、脊柱は頚椎部分で前弯し、胸椎で後弯し、腰椎で再び前弯するというS字構造になっています。

この骨格の構造を支持するのが抗重力筋です。重力に負けないように背中、腹、大腿、臀部とカラダの前後に張り巡らされ、互いに緊張と弛緩を繰り返しながら立位姿勢を保っている筋肉群のことです。

抗重力筋の中で最も重要なのは、脊椎を支える脊柱起立筋、そして腹圧を維持して脊椎の直立にひと役買っている腹筋群、特に腹横筋です。どちらもインナーマッスルの代表格です。このふたつの筋肉が拮抗してうまく働かないと、正しい姿勢は維持できません。

脊柱起立筋と腹横筋が姿勢維持だけではなく、どちらも呼吸にも大切です。

腹横筋は図でも解説している通り、息を吐き切るときに稼働する呼息筋です。図ではカラダの前面だけを呼吸筋を示しているが、背面にある脊柱起立筋もまた、立派な呼吸筋の一つです。

ここは、収縮することで胸郭を広げ、大量の息をカラダに取り込む吸息筋です。

つまり抗重力筋がしっかり働いている人は姿勢が美しいだけではなく、呼吸も十分に吸えて吐き切ることができるということです。その逆に働きが悪い人は、姿勢も悪く、呼吸も浅く速く頼りない状態です。

肺の弾性は加齢で衰えます。呼息筋の鍛錬が重要

息を吸うと肺が膨らみ、息を吐くと肺がしぼむ。物理的には確かにそうかもしれませんが、肺は勝手に膨らんで必要な空気を取り込んでいるわけではありません。

肺と肺を取り囲む胸壁の間にあるスペースを胸腔というが、吸息筋の働きで胸郭が広がると、胸腔の圧力が低くなり、それに引っ張られて肺が膨らみます。つまり、肺は自分で自分の容積を広げることができません。

縮むときは別で、ある程度勝手に縮むことができます。肺にはゴムのような弾性があって、一度広がったら元の状態に戻ろうとするからです。

息を吐くとき初めは腹筋群は稼働しません。ただし、呼気の後半、息を吐き切るときに働いて、肺から空気を押し出す仕組みです。

肺の弾性は、残念ながら年齢を重ねていくにしたがって低下していきます。

いったん広がったはいいけれど、ゴムのような柔軟性が失われた肺は十分に縮むことができません。最大限に息を吸い込んだ後、肺から吐き出せる肺活量も低下します。

通常の呼吸でも、十分に空気を吐くことができず、息苦しさを感じることも多くなります。

肺自体のアンチエイジングは今のところ不可能なので、呼吸筋、とくに呼息筋を衰えさせないことがとても重要です。

呼吸の中枢は3つある

生まれたときから無意識に行っている呼吸ですが、さまざまな器官が関わって緻密にコントロールされています。その司令塔は脳です。

エネルギー代謝のための通常の呼吸を司っているのは、脳幹にある延髄です。脳の最下部に位置していて、消化や嚥下など生命活動の重要な中枢がある場所です。呼吸の中枢もここにあり、体内の二酸化炭素の量をモニターして、呼吸リズムを調整しています。

一方、人は意識的に息を吸ったり、吐いたり止めたりすることができます。これを随意呼吸と言い、ベラベラ喋り続けているとき、呼吸は抑制されています。

このときの中枢は大脳皮質の運動野。喋っているときは大脳皮質によって延髄の働きが抑制され、喋り終わると抑制が外れます。息を整える瞬間、呼吸の中枢が切り替わるということです。

もう一つの呼吸中枢は大脳辺縁系にある扁桃体。扁桃体は恐怖や不安、怒りなどの感情が生み出される場所で、感情によって変化する呼吸、情動呼吸に関わっていると言われています。

脳と筋肉の関係により呼吸の乱れを引き起こす

通常状態の人の呼吸は胸郭を動かす胸式呼吸。これは肋骨に張り巡らされた2層構造の筋肉、外肋間筋と内肋間筋が互いに違いに収縮することで促されています。

外肋間筋は背中側から下の肋骨の胸側に向かって斜め下に走っています。この筋肉が収縮すると肋骨が引き上げられて胸郭が広がり、肺も広がって空気が吸い込まれます。

内肋間筋は胸側から下の肋骨の背中側に向かって走っています。収縮すると肋骨が押し下げられて胸郭が狭まり、空気が押し出されます。

肋間筋には筋肉の収縮状態を神経に伝える筋紡錘というセンサーがとくに集中して存在しています。そのセンサーからの情報は脳に送られ、適切な呼吸が行われているかどうかの判断材料となります。

ですが、外肋間筋が収縮しているときに内肋間筋がうまく弛緩できない。またはその逆のことが起き、互いに筋肉のスイッチングがうまくいかないと脳と呼吸筋のミスマッチが起こります。指令通りに呼吸ができていないと判断した脳は、『もっと呼吸をせよ』という指令をバンバン出します。そして人はゼエゼエと息が乱れてしまいます。

このミスマッチもまた、悪い姿勢をとることによって引き起こされる場合があります。長時間のデスクワークで猫背姿勢になり、胸郭が狭まった状態が続くと肋間筋への負荷は高まり、やがて硬く縮こまってしまう可能性もあるからです。

呼吸を整える

自律神経の乱れを呼吸で整える

自律神経が乱れると、めまい、頭痛、鬱、慢性疲労、高血圧、下痢など心身にさまざまな不調が生じます。慢性のストレスにさらされているのは、夜遅くまで稼働し、運動不足になりがちな生活スタイルに当てはまる人は、自律神経のバランスが乱れやすいです。

その乱れを調整する手段が呼吸です。

呼吸は、通常自律神経の支配下にあり、意識せずとも途切れることはありません。一方で自分でコントロールできるものであります。

特に推奨されているのが、長生き呼吸です。ゆっくりと息を吐く腹式呼吸です。この長生き呼吸を行うと副交感神経を中心に自律神経が活性化されます。

横隔膜を使えば呼吸はストレスに効く

お腹を膨らませながらゆっくり息を吸い、お腹をへこませながらさらにゆっくり長く息を吐きます。深い腹式呼吸を意識的に行うと、普段よりも横隔膜が上下に動く幅が大きくなります。横隔膜が大きく動くと、その周辺にある神経叢が刺激され、自律神経の活性化に繋がります。

スマートフォンやパソコンで集中して作業をしていると、知らず知らずのうちに、姿勢は前かがみになり、肩や胸の筋肉が固まり、呼吸は浅く速くなっていることがあります。これが長時間続くと、交感神経が優位になり、次第に自律神経のバランスが崩れてしまいます。だからこそ意識的に深い腹式呼吸を行い、横隔膜を大きく動かす必要があります。

日常的にストレスを感じている人ほど、意識的に横隔膜を動かすことが大切です。緊張したり、ストレスにさらされると交感神経が過度に高まり、呼吸は自然と浅く速くなってしまいます。ゆっくりと長く吐く呼吸をすることで横隔膜を介して副交感神経が刺激を受け、自律神経のバランスが整います。

横隔膜を大きく動かす深い腹式呼吸は、自律神経のバランスを整えるためのマッサージのようなものです。意識して深い呼吸をすることが、心身のメンテナンスになります。

呼吸を変えれば脳もリラックスする

普段、無意識に行われている呼吸は、脳幹の最下部に位置する延髄にある呼吸中枢の働きによって調整されています。まず頸動脈や大動脈にある化学受容体が、血液中に流れる酸素や二酸化炭素の量を検知します。情報を呼吸中枢に送ります。脳は送られてきた情報を元に、呼吸のリズムを変えています。一方で意識して行われる呼吸は、大脳皮質が呼吸中枢に働きかけることで行われているのだが、ゆっくりと長く吐く呼吸をしたとき脳で感情をコントロールしている前頭前野が反応するといいます。

呼吸で幸せホルモンを増やそう

リラックス時に出るとされている脳波であるアルファ波は、脳内でセロトニンが増えたときに発生すると言われています。神経伝達物質であるセロトニンは、心の安定や幸福感にも関わるため、幸せホルモンと呼ばれています。セロトニン不足は、うつ病、パニック障害、不眠症、慢性の痛みの原因にもなるとされています。

セロトニンを生み出す、セロトニン神経は、昼夜が逆転するような不規則な生活や、運動不足によって弱まってしまいます。一方でジョギングやウォーキング、サイクリングといった一定に周期で筋肉の収縮と弛緩を繰り返すリズム運動によって活性化するといわれています。

意識的に長く吐く呼吸には、リズム運動を行うのと同様の効果が認められています。

ゆっくりと長く吐く腹式呼吸は、副交感神経を中心に自律神経を活性化させ、バランスを整えてくれます。その呼吸を続けていくと、脳波は視覚や聴覚が活発に働いているときに出るベーター波から、リラックス時に出るアルファ波に変わってきます。そして、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増やすのにも役立っています。

普段は無意識に行われている呼吸を、意識的にコントロールすることで心を安定に導くことができます。

ゆっくりと長く吐く腹式呼吸を、まずは1日1〜2回、1回につき10分を目標にリラックス効果も期待できるので、重要な会議を控えて緊張しているとき、仕事が忙しすぎてイライラしているときなどに意識してやってみましょう。

浅い呼吸か、深い呼吸か

深い呼吸で効率よく酸素を取り組もう

人は安静に過ごしているとき1分間に12〜15回ぐらい呼吸をしています。

肺の容量はおよそ5〜6ℓであり、肺活量としては男性が4.5ℓぐらい、女性は3ℓぐらいというのが一般的な数値です。

では、せめて肺活量の半分くらいは、ひと呼吸のたびに換気しているといったら、そうではありません。

現代人の多くがかなり浅い呼吸をしていて、1回でせいぜい500mlぐらいしか換気していなく、気管と気管支の中には肺まで入らない空気が150mlぐらい残るといわれています。

酸素は生命活動の根源ですので、深い呼吸でたっぷり取り込みたいものです。また、現代人に増えつつある浅い呼吸の背景には、運動不足や不活発な生活が隠れていることが多いです。

カラダを動かさないと酸素への要求が乏しくなり、末梢の血流は低下し、毛細血管自体が減る可能性が指摘されています。

1日のどのタイミングでもいいので、自宅で意識的に深い呼吸を行なってみましょう。椅子に深くコソをかけて、鼻で吸って口で吐く①5拍で吐く②3〜4拍で吸う③1〜2拍止める この工程を繰り返してみましょう。ルーティン化すればいつか自然と呼吸は変わります。呼吸をコントロールするカラダのプログラムに書き換えを行うように続けてみましょう。

腹式呼吸がいいか、胸式呼吸がいいか。

どちらも大事です!ゆっくり大きく呼吸をすること

普段、何も意識せずしている呼吸は浅くなりがちです。こんな時は腹式はほとんど動員せず、横隔膜も大して動かないです。安静なら酸素の必要量も少なめだから、浅い胸式呼吸でも間に合ってしまいます。

一方で、腹式呼吸はへその下10㎝あたりの丹田に力を入れ、腹圧を増減させるから、つられて横隔膜はしっかりと機能します。その分、肺は押し広げられて、たっぷりの空気が入りやすくなります。

呼吸を支える呼吸筋群がしっかりと伸縮して、胸郭いっぱいに肺を支えること、この状況がもっとも大切です。

しかし、たくさん吸おうと全力で取り組むと過呼吸に陥ったり、疲労や緊張から続けるのが困難になりますので注意も必要です。

7〜8割ぐらいの深呼吸にとどめておけば続けやすいと思います。

これに慣れてくると、普段の呼吸が深くなります。緊張した際などに呼吸が浅くなると、その変を自覚できるようになります。

もし、ご自身が今、緊張しているなと分かれば、呼吸を操作することで自律神経にアプローチできるので、溜まったストレスも逃がしやすくなります。

人は緊張しやすく、弛緩しにくくできている。頭でイメージするだけでリラックスするのは、難しいので、呼吸をコントロールしてリラックスへ誘導していきましょう。

鼻呼吸をすべきか、口呼吸をすべきか

鼻呼吸を優位にすることが大切

口は呼吸器、鼻は呼吸器です。消化器に本来の仕事をさせないことが大事です。

呼吸は鼻呼吸に限ります。

なぜか??鼻には鼻毛が生えている。鼻毛は異物やアレルギー反応をもたらす物質、アレルゲンの侵入に立ち向かい、呼吸器を守る免疫システムの最前線です。

けれど、喉にはそんなありがたいものがなく、よからぬものを空気と一緒に吸い込めば肺まで直行しかねない。口はしっかりと閉じておくべきです。

とはいえ、ランニングやバイクなどリズミカルなスポーツをする際は、鼻で吸って口から吐いても構いません。

高齢者の訃報にしばしば死因は肺炎といわれています。これは外来のウイルスや最近のほか、飲食物や唾液、あるいは唾液とともに歯周病菌などを誤嚥して起きた可能性があります。

就寝中、口呼吸だとさまざまなリスクが伴います。口呼吸に陥りやすい睡眠時無呼吸症候群にも注意が必要です。

力を出すのは吸うときか、吐くときか。

吸ったら息を止め、少しずつ、細かく吐きながら動きましょう

人は空気を吐くときの方が、力もスピードも出せるようになっています。ただし、動作に正確さを求められる場面、例えばバッティングなどでは、一気には吐かないです。

イチローのような打撃を極めてる選手は、息を吸いながら構え、いったん息を止めたら、少しずつ細かく吐きながらスイングしていたはずです。

筋トレの指導を受けたことのある人も、力を発揮するときは心臓に負担をかけないように息を吐きながらするように指導を受けたはずです。

ですが、最大筋力で重量物を上げたいトレーニングは、呼吸を止め、腹圧を高めて上げるが、こらは心臓をはじめ、循環器系に重い負担を強いるリスキーな手法といえます。

大きな力は出やすいが、筋肉が震えやすく、繊細な動きがしづらくなります。

数値には諸説ありますが、出そうと思っても人は最大筋力の40%ぐらいまでしか力を出せず、心理的な限界に達することで運動を終えてしまうことです。

温存しているパワーを少しでも引き出すには、心理的限界という重しを軽くすることです。

呼吸をすることで脱力し、自律神経系を整えられれば、パフォーマンスを上げることができるでしょう。

運動習慣も大切ですが、その中に呼吸トレーニングも入れてみましょう。