睡眠の基本を知る

お知らせ

睡眠とは??

睡眠にはいろいろな役割があります。

○記憶の定着・・・脳内で情報が整理されることで、長期的な記憶が確立されます。

○学習能力、判断力の向上・・・学習した内容が整理、保存され後で思い出せるようになります。十分な睡眠をとると脳が適切に機能し、判断力も向上します。

○脳のメンテナンス・・・神経細胞の修復や新しい情報の処理、不要な情報の削除などのメンテナンス作業が行われます。

○精神的安定・・・ストレスや不安の軽減、感情の調整などにより精神的な安定が保たれます。

○免疫システムの強化・・・免疫機能が活性化し、病気や感染症に対する抵抗力がアップします。

○代謝の調整・・・血糖値やホルモンのバランスが整い、体内のエネルギーが効率的に利用されます。

○見た目を整える・・・成長ホルモンの分泌が増加し、肌のターンオーバーや脂肪の代謝が促進されます。

○身体の回復・・・身体の各部位の細胞が修復され、疲労が軽減されます。

 

一晩で2つの睡眠段階を繰り返します。

一晩の睡眠には、覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠という段階があります。ノンレム睡眠とレム睡眠は平均90分単位で繰り返されるため、『90分の2倍で3時間寝たら睡眠は十分』『6時間睡眠がすっきりと起きられる』などと考えている人もいます。

しかし、睡眠サイクルは一晩のうちでも大きく揺らぐため、『90分』は当てになりません。

一晩の睡眠を確認すると、時間に沿って変化することがわかります。朝方にかけてレム睡眠が多くなり、ノンレム睡眠が浅くなっていくことで、自然と目が覚めます。

【入眠】覚醒している状態から睡眠に移る→【ノンレム睡眠】N1〜N3の3段階あり、一番深いものは深睡眠(徐波睡眠)という。↔︎繰り返す↔︎【レム睡眠】ノンレム睡眠の後に起こる鮮明な夢を見る。夜の後半にも増える。→【起床】意識がはっきりし、覚醒状態になる。

 

ノンレム睡眠が記憶を強化

ノンレム睡眠では、大脳皮質の神経細胞が一斉に活動の休止を繰り返すようになります。睡眠は脳の休息時間だと思っていますが、しれは誤解です。実は脳の活動量は変わりません。

ノンレム睡眠は深さの順にN1、N2、N3の3段階に分けられ、N3もっとも深い睡眠です。

N1は入眠の初期段階で、筋肉の緊張が緩みます。N2では体温が下がり、心拍数が安定します。N3は最も深い睡眠で、デルタ波と呼ばれる大きな脳波が現れます。成長ホルモンが活発に分泌し、身体の回復が促進されますが、この時に起こされると倦怠感が残りやすくなります。

特に重要な深睡眠の役割

疲労回復・・・筋肉の緊張が緩み、エネルギー量が抑制されて体力が回復。成長ホルモンが分泌されて筋肉が成長します。

細胞の修復・・・損傷した細胞が修復され皮膚や内臓の機能などが正常に維持されます。

ストレス解消・・・適切なストレスホルモンの分泌がストレスに対処し、心身のバランスをと持ちます。

免疫力の強化・・・免疫力を高めるホルモンが放出され、身体をがんや感染症などから守ります。

 

レム睡眠が記憶を整理し鮮明な夢をみせます。

レム睡眠は、急速眼球運動と呼ばれる睡眠段階です。頭文字のREMから名付けられました。特徴は眼球が素早く動くことです。筋肉は完全に脱力しますが、脳波は非常に活発で、細かい波形が波形が観察されます。脳の血流量も増えることが最近の研究でわかってきたようです。

レム睡眠中は、はっきりした夢を見ることが知られています。朝方になるとレム睡眠が増えるため、起きたときに夢の内容を覚えていることがあります。子供の方が成人よりもレム睡眠が多く、成長期には特に増えます。しかし、加齢と共にレム睡眠の割合は減少していきます。

 

眠気は睡眠圧と体内時計が作りだす

眠気は、覚醒時間が長くなるにつれて蓄積していき、十分な睡眠をとると消えます。

眠気を引き起こす脳内のメカニズムはいまだに解明されていませんが、眠気は『睡眠圧』と『体内時計』の2つの要因によって形成されることがわかっています。

睡眠圧とは、起きている間にたまっていく睡眠の欲求の強さのことで、眠ると解消されます。

体内時計は約24時間サイクルで繰り返されるリズムで、体内時計からの覚醒シグナル午後9時ごろをピークに、その後弱まっていきます。睡眠圧が蓄積された状態で覚醒シグナルが低下すると、眠りに入ります。

 

睡眠不足は感情も左右する

睡眠不足になると、コミュニケーション力や理解能力が低下し、小さなことでもイライラしやすくなることがわかっています。

サマータイムを導入しているアメリカでは、毎年3月の第2日曜日から、11月の第1日曜日の期間が夏時間に切り替わります。夏時間に移行する日は、夜中の2時に時計の針を1時間進めます。つまり、この日は早寝を意識しない限り、睡眠時間が1時間短くなってしまうのです。驚くべきことに、この日だけ寄付金が減少するという研究結果があるようです。

これは、睡眠不足によって他者を思いやる気持ちが抑制されてしまうことを示唆していると考えられます。

 

リズム障害は若者に多い

朝型、夜型という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。人間は、幼児期は朝型ですが、思春期から20代の若者の体内時計は平均して約2時間遅れ、夜型になります。

この傾向は、社会的・心理的なものというよりも、生物学的な要因によるものです。30代を過ぎると徐々に回復し、40〜50代を迎える頃には、再び朝型の生活リズムに戻ります。

夜型になると、学校などで早起きが必要な日でも夜遅くまで眠くなりません。遅寝早起きになってしまい、その結果、睡眠不足にになる傾向にあります。これが高じると『概日リズム睡眠障害』となり、中には不登校になってしまう生徒も出てきます。

 

夢は毎晩必ず見ている

眠っているとき、全員が必ず夢を見ています。鮮明な夢は睡眠サイクルのレム睡眠と呼ばれる段階で発生します。レム睡眠には忘却作用があるため、起きたときには基本的に夢の内容を忘れてしまいます。内容を覚えている夢とそうでない夢がある理由はまだわかっていないようです。

夢の内容は、日中の経験や感情の処理、問題解決、または無意識の願望の表出と関連していると考えられています。中には、悪夢を見ることもありますが、それは実際にストレスが多い環境に置かれた場合に、ストレスフルな夢を見ることで、ストレスに対する耐性が得られるのではないかと考えている研究者もいます。

 

 

睡眠不足の悪影響と睡眠障害

眠りたいのに眠れない不眠症

不眠に悩む人は成人はおよそ4人に1人。入眠困難や、睡眠維持障害が心だけでなく身体にも影響を及ぼしています。イライラする、眠いのにぐっすり眠れない、熟睡感がないなどの症状が日中の生活に支障をきたします。

不眠を訴える人の中には、実際は眠れているのにそれを誤認している人もいます。治療は薬物療法だけだはなく、認知行動療法も効果的です。認知行動療法とは、症状の要因となっている考え方や行動を改善し、習慣を変えていく心理療法のことです。効果を得るまでにはある程度の期間が必要ですが、効果が長続きしやすいと言われています。

『睡眠時無呼吸症候群』

睡眠の質を下げる要因の1つに『いびき』があります。『いびきがうるさい』と笑い話にしがちですが、侮れません。大きないびきは睡眠時無呼吸の可能性が高いのです。

睡眠時無呼吸症候群は中等度以上の潜在患者数が900万人と言われています。睡眠中の血中酸素濃度の低下繰り返されることで、脳卒中や心臓発作などの重篤な疾患のリスクが大幅に上がります。また、脳が非常事態を感知し、覚醒反応を起こすため、睡眠の質が大きく下がります。吸気時に起動が閉塞するため、胸腔内圧が下がって心房から利尿物質が放出されることで、夜間頻尿も引き起こされます。

睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

顎が小さい人 太っている人 加齢 鼻づまり

『レム睡眠行動障害』

レム睡眠行動障害は、レム睡眠中に異常な動作を伴う疾患です。通常、レム睡眠中は脱力して筋肉が弛緩(レム脱力)していますが、この脱力が不十分なることで起こります。

夢の中で蹴ったり、叩いたり、叫んだりすると、それが現実の行動として反映されるため、自分だけではなく一緒に寝ている家族に怪我を負わせることもあります。

50代以降に発症しやすく、特に男性に多く見られます。原因には、レム脱力に関わる脳幹の機能障害が関与していると考えられています。また、10〜20年後にパーキンソン病やレビー小体型認知症を発症する可能性が高いとされています。

『夢遊病』

夢遊病は別名『睡眠時遊行症』とも言われ、睡眠中に意識が覚醒しないまま、行動を起こしてします睡眠障害です。睡眠中に神経制御が乱れ、ノンレム睡眠から身体が覚醒してしまうことで引き起こされます。一般的に子供に多く見られ、夜間にベットから出てきて歩き回ることもあります。脳の運動系や感覚系は働いているため、障害物をきちんと避ける場合もあります。無理に目覚めさせるよりも、怪我に注意しながら、再び眠りにつくまで見守るのが大切です。

睡眠時遊行症は、成長期にピークを迎え、思春期以降は自然に改善します。

『むずむず症候群』

むずむず症候群は、眠る前などに脚の中を虫が這うような感覚や、ほてり、痒み、痛みなどといった不快感が生じ、じっとしていられなくなります。この不快感は下肢を動かすことで、軽減されます。特に60〜70代に多く、男性よりも女性の方が発症しやすい疾患です。

周期性四肢運動障害は、睡眠中に主に下肢が無意識にピクピク動くなどして、睡眠が浅くなる疾患です。シャワーなどの刺激で症状が軽くなることがありますが、症状が深刻な場合は薬物療法が検討されることもあります。

金縛りの正体はレム睡眠時の脱力

金縛りは医学的には睡眠麻痺と呼ばれ、30〜40%の人が1度は経験すると言われています。筋肉が弛緩して意識的に動かすことのできないレム睡眠中に、脳だけが覚醒することで引き起こされ、特に不規則な生活やストレスが多いとき、心身に疲れが溜まっている状態で眠るときに多く現れます。胸やお腹に重しがのっているような感覚になり、息苦しいと感じることもあります。

金縛りの間に幻覚が見えることがありますが、実はそれはレム睡眠中に夢見と同じ減少です。不安な気持ちなど、感情をコントロールする脳の扁桃体が活発に活動するため、怖い幻覚を見ることも多いのです。

睡眠薬にはどんな種類が?!

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシンは覚醒を促進する神経伝達物質。オレキシンの作用を阻害することで、覚醒を抑制し睡眠へと導きます。副作用は少なく、依存性、耐性も極めて低いです。

メラトニン受容体作動薬

メラトニンは体内時計を調整し、睡眠を促進するホルモン。その受容体を刺激することで、体内時計を整えて睡眠を促進し、睡眠リズムを改善します。副作用は少ないが即効性は期待できない。依存性、耐性は極めて低いです。

GABA受容体作用薬

中枢神経系の活性を抑制することで睡眠を誘導します。抑制性神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)の作用を増強して、鎮静や抗不安効果を発揮します。不作用が生じやすく、依存性、耐性も見られます。

 

 

睡眠の質を高める

普段より30分早く眠る

日本人の多くが睡眠不足なのに、それに気づいていません。『睡眠の質が良ければ、時間は短くても大丈夫』という人もいますが、これは誤りです。量で質をカバーできません。

睡眠時間は住宅ローンのように毎晩支払わなければならない必要経費と考えましょう。騙されたと思って、数日間、普段より30分早く就寝してみてください。体調が変わるのを実感できるはずです。

 

暗くて静かで朝まで適温が重要

睡眠の質に関わる主な要因は、光、音、そして温度の3つです。これらの項目を意識しながら、寝室の環境を見直してみましょう。

普段から、夜になったら関節照明を使用して薄暗くしておきます。眠るときは完全に真っ暗にすることが望ましく、できれば豆電球も使用しない方がよいです。

夜中にトイレに行くときなどに危ないと感じる場合は、寝室の出入り口近くに暗めの人感センサーライトを設置するなどの対策をしてみましょう。なるべく静かな場所であること、快適な温度と湿度を朝まで維持することも重要です。そのほか、観葉植物を置くなども有効なことがあります。

 

自分に合った枕を選ぼう

適切な枕を選ばないと、気道や首に負担がかかる可能性があります。朝目覚めた時に首や肩が凝っていたら、それは枕があっていないからかもしれません。

枕の役割は、マットレスや敷き布団と後頭部から首にかけての隙間を埋め、立ち姿勢に近い自然な体勢を保つことにあります。この隙間は個人差が大きいので、一概にこの高さの枕がよいとは言えません。仰向け、横向き、うつ伏せなどの寝姿勢によって使い分けることも重要です。頭部を支える弾力があり、吸湿、放湿性の良い素材を選びましょう。

 

午後6時以降はカフェインを控えよう

カフェインが眠気を覚ますという作用は知っている人も多いと思います。この覚醒作用は、摂取後15分から効果現れ、最大効果は30分〜1時間。効果が半減するまでは2〜8時間ほどかかります。中には、午後6時に飲んだカフェインの影響が午前0時以降も続くこともあります。

カフェインを摂取しても眠れる人もいますが、摂取後は眠りが浅くなり、利尿作用もあるため、睡眠の質の悪化が問題点です。摂取量とタイミングには注意が必要です。カフェインは、緑茶やほうじ茶、紅茶、ココア、チョコレートなどにも含まれます。健康な成人の場合、コーヒーなら1日に2〜4杯までが適切とされています。

 

理想の夕食時間は就寝4時間前まで

食事のあとに眠気を感じるのは、血糖値が上がり、満腹ホルモンのレプチンの分泌が増加し、空腹ホルモンのグレリンの分泌が低下して、オレキシンが抑制されるためです。しかし、食事後すぐは、胃腸が活発に働いて深部体温が上がるため、睡眠が浅くなります。

胃腸の働きが落ち着くまでには、3時間ほどかかるために、就寝4時間前には食事を終えることが理想的です。午前0時に就寝する場合は、午後8時に食事を終えると良いでしょう。

どうしても夕食が遅くなる場合は、消化の良いものを食べる、食事を分けるといった工夫をすると、胃腸への負担は軽減できます。

 

入浴は就寝の1〜2時間前までに済ませる

入浴は就寝の1〜2時間前に済ませるのが理想です。40℃のお湯に10〜15分ほど、やや汗ばむ程度に全身浸かるのがおすすめです。入浴によって深部体温が0.5℃ほど上がり、その1〜2時間で下がることで眠りやすくなるので、そのタイミングで寝るのがベストです。

加えて、お湯に浸かることで、筋肉をリラックスさせ、血行を良くすることができます。

温度が熱すぎると逆に目が覚めてしまうので要注意です。就寝前に入浴する場合は、38℃程度のぬるめのお湯にしましょう。もしくはそのまま眠って朝にシャワーを浴びるのがおすすめです。交感神経が優位になり、スッキリと目覚めることができます。

 

寝酒はやめ、飲酒は夕食まで

アルコールは眠気を誘いますが、実際は脳が麻痺しているだけで、睡眠機能が正常に働いているわけではありません。寝酒で入眠は促されますが、深いノンレム睡眠が不足し、レム睡眠も減少します。また、アルコールの利尿作用でトイレが近くなり、代謝物アセトアルデヒドによる中途覚醒や、舌や喉の筋肉が弛緩して気道が狭まり、いびきや無呼吸の原因にもなります。

飲酒は、夕食時間までにとどめることが重要です。寝るまでにアルコールが代謝され、睡眠へと影響が軽減されます。適量の目安は2ドリンクまで。一緒に水を飲むことも重要で、酒量の増加を防ぎます。

 

仮眠(パワーナップ)は3か条を守ること

昼間にどうしても眠いときは、3つのポイントを意識して仮眠をとりましょう。あくまでも応急処置ですが、リフレッシュ効果が期待できます。まず、仮眠を取るなら午後2時まで。それ以降だと、夜の睡眠に支障をきたします。次に、首や身体を完全に脱力できる体勢を取ること。また、時間は20分程度で終わらせることです。それ以上眠ると、深い睡眠段階に入り、目覚めにくくなってしまいます。

そして、仮眠の直前には、カフェインを摂るのがおすすめです。効果が現れるまで20〜30かかるので、起きる時間にちょうど効果が現れスッキリと目覚められます。