流行りの”筋膜”どんな役割が?!

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そもそも筋膜って??

近年、運動やリハビリテーションやメディアでも注目されているのが筋膜です。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

そもそもカラダを作るすべてのパーツは、膜状の薄い組織で覆われています。これは『ファシア』と呼ばれていて、中でも筋肉や内臓など主要なパーツを包むのが、筋膜です。

以前は動物実験で筋肉の性質を調べる際、周りの筋膜は余計なモノとして取り除いていました。

しかし、筋膜には力を蓄えたり、伝えたり、カラダの状況をモニタリングしたりする働きがあるとわかり、現在では筋肉と筋膜をセットで捉えないとカラダの本当の機能はわからないと考えられるようになりました。

実際に、日常で筋膜を意識するチャンスなどほぼないと言えますが、意識しないのはもったいないです。

トレーニングの効果が落ちたり、スポーツパフォーマンスが下がったり、肩こりや腰痛などトラブルが一向に解決できなかったりする恐れもあります。

この筋膜を少しずつ紐解いていきましょう。

例えば、何がカラダを支えるのか??と聞かれたらどう答えますか?

きっと大半の方は『骨か筋肉』と答えると思います。確かに骨と筋肉、つまり骨格はカラダを支えているが、筋膜もカラダの支持に重要な役目を果たしています。

最近では筋膜は”第二の骨格”とも呼ばれています。

皮膚の下には、筋膜が二層に渡って走っています。浅いところを走る『浅筋膜』と、より深いところを走る『深筋膜』です。

浅筋膜にも深筋膜にも境目はなく、頭のてっぺんから爪先まで覆われています。

『人体は、立体成形されたボディスーツを2枚、重ね着しているようなものです。筋膜というボディスーツがカラダの一体性を保つことから、”第二の骨格”と称せれる起因です』

それだけではなく、ファシアを含めた筋膜は、骨格を作る骨も筋肉も、さらに血管、神経、心臓などの内臓、脳だって覆っています。

もっと言うと、およそ37兆個の細胞一つひとつをラッピングするのもやはり筋膜です。

臓器や細胞がバラバラにならず、決まったポジションで働けるのも、ミクロからマクロまで3次元でリンクさせる筋膜のおかげです。

筋肉とは根本的に異なる構造をもつ

筋肉を作る筋線維は、アクチンとミオシンというタンパク質が交互に重なったものです。では、筋膜の作りはどうでしょうか。

『筋膜もタンパク質からなりますが、筋肉とは異なり、コラーゲンとエラスチンという2種類の線維状のタンパク質で織られたガーゼのような構造をしています』

コラーゲンは、アミノ酸が連なった3本の長い鎖が螺旋状に集まった丈夫な線維です。引っ張る力に抵抗する粘り気があり、大きく急激なカラダの変形を防ぐことも担っています。

エラスチンは、コイル状の細い線維からなり、ゴムのように伸び縮みが自在にできます。力を加えると変形しますが、力を抜くと元のカタチに戻ろうとする性質があり、筋膜が変形しても元通りに復活させてくれます。

この2つは、サラサラとした適度な粘り気を持つ細胞外基質に浸されています。

細胞外基質は、ヒアルロン酸やプロテオグリカンといった保水性の高い成分からできています。

コラーゲンとエラスチンの規則正しい織り目が何かのきっかけで乱れると、粘性や弾性がダウンします。

それが筋膜の動きの制限や癒着、滑りが悪くなる滑走性の低下に繋がります。

筋肉には、骨を動かす骨格筋と血管などを作る平滑筋があるように、筋膜にも種類があり働きもそれぞれ異なります。

皮下でボディスーツの役目を果たす浅筋膜と深層筋意外にも、筋膜には大きく次の2タイプがあります。

まずは、線維束膜。筋膜と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、たぶんこれだと思います。

筋肉を何重にも包み、形を保持し、筋力を伝えます。筋外膜、筋周膜、筋内膜などがあり、神経、血管、リンパ管の通り道も確保しています。

次に連結膜です。こちらは、自動連結膜と他動連結膜からなります。

自動連結膜の代表格は、腰背部の胸腰筋膜、膝の腸脛靭帯があります。特徴は、多くのセンサーを備え、関節の動きや安定性や力の伝達に関わります。収縮能力もあり筋肉と密に連携します。

他動連結膜には頭蓋骨と頸椎をつなぐ項靭帯、足裏のアーチを支える足底腱膜があります。骨格をつなぐほかに、こちらも筋肉に加わる力を伝えます。

筋膜の誤解の多くは、筋膜が1種類しかないと思い込んでいることが多いと思います。

筋肉にはないユニークな特徴があります

筋膜には、筋肉や骨といった特徴があります。チキソトロピーという特性です。とろみの強いスープをスプーンでかき混ぜると、スピードが遅いうちはスムーズに回せるが、スピードが早くなるほど抵抗は強まります。

これがチキソトロピーです。

この性質を踏まえると、筋膜の抵抗を抑えてアプローチをするなら、ストレッチやヨガやローリング療法のように統一圧でゆっくり持続的な負荷が有効になります。

次はクリープという特性です。不良姿勢など不自然な力が加わり続けると、筋膜がじわじわと変形して伸び、元に戻りにくくなることを指します。

ゆえに一度クリープした筋膜のリカバリーには、継続的なケアが必要です。

最後に、メカノトランスダクションという反応です。筋膜のコラーゲンやエラスチンを生み出すのは線維芽細胞です。

ここが刺激をされると、コラーゲンやエラスチンの合成が盛んになります。これがメカノトランスダクションです。

筋肉のように肥大はしませんが、筋膜に適切な刺激を与えることは、コラーゲンなどを合成し筋膜を健全に再構成するのに不可欠なことです。

カラダの情報を脳に伝えるセンサーを持ちます

筋膜は単なる膜ではなく、スマホのようにセンサーを内蔵しています。筋膜に埋め込まれたり、貫通したりしているセンサーには、機械受容器と固有感覚受容器があります。

機械受容器は、体表に近い浅筋膜などにあるマイスナー小体、パチニ小体、ルフィニ小体などです。外部との接触や、運動や姿勢の変化による圧迫や伸長などをキャッチします。

固有感覚受容器は、より深層の深筋膜などと共有されています。筋肉と腱にある筋紡錘やゴルジ腱器官などです。

カラダの内部の状態を察知します。例えば、目を閉じて視覚をシャットアウトしても指で鼻先が触れるのは、固有感覚受容器からの情報によります。

機械受容器や固有感覚受容器からのシグナルは、常に脳へと伝えられています。

つまり、脳が『カラダがどうなっているのか』を知るための貴重なデータを発信をするのは、筋膜には他なりません。

筋膜には何本ものラインがあります。

全身を切れ目なくカバーをする筋膜は、バラバラに動くのではなく、グループで連動して働きます。

筋膜の連鎖や連結には多くのモデルが提唱されています。まだ、決定的なモデルは登場していませんが、この4つのラインを意識したケアが痛みの治療や運動パフォーマンスの向上に活かせるのは間違いないです。

筋膜のラインで世界的にメジャーなのは、アナトミートレインです。代表する4つをピックアップしました。

①浅層フロントライン

バックラインと対の関係にあるカラダの前面を走るライン。後頭部の頭皮筋膜からスタートし、首の脇から鎖骨へ走る胸鎖乳突筋を経て胸の前を通り、腹直筋に至ります。

骨盤から下は大腿四頭筋、スネの前脛骨筋を通って足の甲から足趾へ至ります。下半身は特に歩行に関わる筋肉群をカバーしています。

関連症状→腰痛、股関節痛、膝痛、臀部痛、ロコモなど

②浅層バックライン

カラダの後ろ側を走るラインで姿勢を維持する役割を果たします。スタート地点は眉毛の上の前頭筋。ここから頭頂部を上がって下がって脊柱起立筋に至り、骨盤を経由して大腿裏のハムストリングス、ふくらはぎの腓骨筋、足の裏の足底腱膜に至ります。

関連症状→腰痛、肩こり、首こり、足底腱膜炎、目の疲れ、猫背など

③ラテラルライン

頭から足底までカラダの側面を走るラインです。カラダの左右バランスに大きく関係します。

耳の後ろにある乳様突起からスタートをし、前面の胸鎖乳突筋と後面の頭板状筋の二手に分かれて下降します。

胸郭を覆う内・外肋間筋で一体となり、外腹斜筋を経て大腿横の大腿筋膜張筋、腸脛靭帯から腓骨筋、足底に至ります。

関連症状→スマホ首、首こり、肩こり、浅い呼吸など

④スパイラルライン

カラダを螺旋状にクロスして走行するラインです。体幹の捻り動作や骨盤の傾斜に深く関わります。

後頭部の頭板状筋からスタートし、肩甲骨内側の菱形筋から外側の前鋸筋へと繋がります。

外腹斜筋、内腹斜筋を経由して逆側の大腿筋膜張筋、腸頸靭帯、前脛骨筋から足底に。

関連症状→骨盤の前後傾、X脚、o脚、腰痛、など

『筋膜ラインのストレッチのやり方』

バックラインフロントラインラテラルラインスパイラルライン

上記の順番でストレッチを続けて行う。パッケージのバリエーションは朝・昼・夕・夜の1日4回、1回4種だけ

実施するだけでも効果があります。

肩こり・腰痛

筋膜が分厚くなり、滑りが悪くなると、慢性の痛みが生じやすい。

日本人の有訴率(不調を訴える割合)のトップ2は、肩こりと腰痛です。病名のつかない慢性的な肩こり&腰痛の始まりの多くは、筋膜にストレスがかかる不自然な姿勢を続けることです。

筋膜がストレスを受けると、厚くなったり、粘性が上がり動きが悪くなる『緻密化』が起こったりして、滑走性(滑りやすさ)が下がります。

慢性的な腰痛がある人は、腰痛がない人と比べて腰の胸腰筋膜が約25%厚くなり、筋膜の滑走性が低下すると言われています。

筋膜が滑りずらくなると炎症が生じます。筋膜には痛みを感じる自由神経終末が分布しており、炎症によって痛みが誘発されます。

筋膜が厚くなり滑走性が落ちると、当然筋肉も動きにくくなります。

結果、筋肉が硬くなり血行が滞り、筋肉から『助けて!!』というSOSとして痛みが脳へ伝わります。

この筋膜と筋肉双方からの刺激で肩こりも腰痛も長引く原因になっています。

不良姿勢

筋膜が変形して固まると正しい姿勢を取るのは難しい。

最先端のスピードスケートのウエアは、低い前傾姿勢を保って空気抵抗を減らすため、直立すると突っ張る設計がされているといいます。

猫背や腰の丸まりなどの不良姿勢がなかなか直せない一因は、ボディスーツでもある筋膜が、スケートウエアのように不良姿勢を固定化している点にあります。正しい姿勢を心掛けたとしても、筋膜が突っ張ってしまい、不良姿勢に戻ってしまいます。

これは、筋膜の特性の一つであるクリープによるものです。同じ負荷が加わり続けると、筋膜が伸びて変形する現象です。

猫背や腰の丸まりなどをリセットするには、ストレッチや筋トレなどで筋肉にアクセスするのが巷では王道ですが、筋膜の変形をそのままにしていたら、不良姿勢や固まった筋膜は克服できません。

ストレッチや筋トレだけではなく、ローリングや筋膜ローラーなどで筋膜をリリースする作業が不可欠です。

クリープした筋膜をニュートラルに戻すように取り組みましょう。

冷え・むくみ

血管ネットワークの圧迫で血流が悪化。カラダが冷えてむくむ。

血管は人体でもっとも重要なインフラです。そのネットワークは筋膜に沿って広がり、血管自体も筋膜でラッピングされています。

不良姿勢や運動不足などで、血管と接している筋膜が捻じれたり、変形を起こしたりすると、血管が部分的に圧迫されます。それにより、血液の流れは一気にスローダウンしてしまいます。

血液は、カラダに熱を伝えているので、血流の悪化は体温の低下に直結します。また、心臓へ戻る静脈血の環流が滞ると、むくみも生じやすくなります。

加えて、座っている時間が長くなると、下半身の筋肉が衰えると同時に、筋肉を包んでいる筋膜同士がスムーズに動きにくくなります。

心臓より下に流れる静脈血は、下半身の筋肉の伸縮によるポンプ作用に助けられて、重力に逆らって心臓に戻ります。

下半身の筋肉が衰えて、筋膜の滑走性も悪くなると、ポンプ作用が働きにくくなり、血液循環は一層悪くなります。

呼吸不全

胸郭の自由な動きを邪魔して呼吸筋の可動域がダウンする。

眠っても疲れが抜けない、朝から頭がぼんやりしている。そうした自覚がありませんか??そんな時は、ご自身の呼吸をチェックしてみましょう。呼吸が浅くなると、新鮮な酸素が足りなくなります。

それではカラダの疲れが取れないですし、脳細胞の働きも悪くなります。

呼吸の要である肺は、風船のようなものです。それ自体は伸び縮みできません。肋間筋や横隔膜といった呼吸を助ける筋肉(呼吸筋)によって、肺を納めた胸郭が膨らむと空気が入り、胸郭が狭くなると空気が出ていくという仕組みです。

デスクワークなどで前屈みの姿勢をとる時間が長引くと、胸が閉じて胸郭の動きが鈍くなります。すると呼吸筋に関わる筋膜の滑走性がダウンします。

呼吸筋の可動域が制限されて呼吸が浅くなり、色んな症状に悩まされます。

デスクワーク時は定期的にブレイクして筋膜をリセットしましょう。胸を大きく開いて呼吸筋と筋膜を動かして、胸郭をしなやかになるように意識してみましょう。

自律神経失調

筋膜からの信号入力ミスで交感神経がオフにならない

消化吸収や血圧など、生きるために必須の機能を調整するのは、自律神経です。自律神経は交感神経と副交感神経からなります。交感神経は心身を活動モードに、副交感神経は休息モードへとそれぞれを調整します。

交感神経と副交感神経はバランスよく働くのが理想です。ですが、常に緊張下にある現代人は交感神経が優位になり過ぎています。

休息モードに切り替わりにくいため、疲労もストレスも溜まりやすくなります。

交感神経の興奮の背景にも、筋膜があります。

不良姿勢などで筋膜に負担がかかりすぎると、筋膜のセンサーから脊髄へ誤った信号が繰り返し入力されます。この誤入力により、交感神経が優位な状況が作り出されます。

逆に筋膜へのアプローチで、自律神経の高ぶりにブレーキがかかる可能性もあります。筋膜に広がる毛細血管の大半は交感神経に支配されます。

このため筋膜を整えることで、交感神経の亢進が抑えられ、自律神経のバランスをとりやすい状態になります。

スポーツ障害

使い過ぎてケアしないとオーバーユース症候群が多発する。

ランナーの多くが抱えるスポーツ障害に、膝の腸脛靭帯炎と足裏の足底腱膜炎があります。これはどちらも筋膜のトラブルです。使い過ぎで、同じような場所に何度も負担が集中し続けるために、筋膜や周辺の筋肉に炎症が生じて痛みが発生します。

この状態が、いわゆるオーバーユース症候群です。

オーバーユース症候群を防ぐには、運動量を減らしたり、運動後に筋膜リリースやローリングなどで筋膜をいたわる習慣が必ず必要になります。

筋膜は、スポーツのパフォーマンスにも影響があります。

筋肉の末端は骨に固定されており、決まった動きしかできません。それと比べると筋膜は自由度が高いです。

運動の主役は筋肉だが、筋肉と表裏一体で動きを細かく制御するのは、筋膜なのです。

ゆえに筋膜には、カラダの現状をモニターする固有感覚受容器が備わる。

正しいフォームで力を発揮するには、筋肉だけではなく、筋膜がきちんと機能できるように整えることが大切です。