【もしかして貧血??】

お知らせ

軽視できない”貧血”対策

女性の約15%、男性の約10%が貧血の悩みを抱えています。当店のご利用の方からもよく相談を受けることがあります。貧血の原因や治療法・対策をお伝えします。

【鉄の不足で起こる『鉄欠乏性貧血』】

貧血の多くは、体内の鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。

貧血はあくまでも症状であり、原因は様々です。胃や大腸癌などの命に関わる病気が潜んでいることがあるので、貧血が起こっても『体質だから仕方がない』『加齢のせいだろう』などと考えて、そのままにするのは危険です。

□主な症状

鉄が不足すると血液中の赤血球に含まれる色素『ヘモグロビン』が減少します。ヘモグロビンには酸素を体の隅々に運ぶ働きがあるので、減少すると体内の酸素が不足して低酸素の状態になり、動悸や息切れが生じたり、疲れやすくなります。さらに顔色が悪くなったり、頭が重く感じたり、就寝時に脚がむずむずして寝付けないレストレスレッグス症候群が起こることがあります。

また、爪が薄くなって欠けやすくなったり、反り返ったりすることがあります。鉄は体の組織を作るのに必要な最も大切な栄養素の一つです。そのため鉄が不足するとさまざまな組織に影響を与え、特に爪などの細胞分裂が盛んな組織に異常が見られやすいです。

そのほかにも、はっきりとした理由はわかっていませんが、貧血があると無性に氷を食べたくなるという症状が起こることがあります。

□鉄が不足する原因

鉄は体の中におよそ3〜5g貯蔵されていて、そのほとんどは繰り返し再利用されています。食事などで1日1mgほど吸収し、汗や尿、便などで1日1mgほど体外に排出され、体内の鉄の量が調整されています。

しかし、鉄の摂取量が少なかったり、成長期や妊娠期、授乳期で鉄の消費量が多いと不足しがちで、慢性的な出血がある場合も不足しやすくなります。

□鉄が不足する主な原因

【鉄の摂取量が少ない】

  • 食べ物から十分の鉄がとれていない
  • 食事の栄養バランスが悪い
  • 過度なダイエットを行っている

【鉄の消費量が多い】

  • 成長期は多くの鉄が必要
  • 成長期や授乳期は子供の成長や授乳のために消費する鉄の量が増える

【慢性的な出血がある】

  • 月経がある
  • 月経血が多い
  • 胃や大腸の腫瘍・ポリープ、子宮筋腫、子宮癌、痔などの病気で慢性的な出血がある

【血液検査でヘモグロビンの濃度を確認】

鉄欠乏性貧血がゆっくりと進行している場合、体は貧血の状態に徐々に慣れていくので、症状が感じにくいことがあります。また、体を活発に動かす機会が少ないと酸素不足を感じにくかったり、中高年の場合は年のせいだと考えたりして、病気の発見につながりにくいこともあります。

鉄欠乏性貧血は血液検査でわかるので、定期的に健康診断や人間ドックで血液検査を受けるようにしましょう。

血液検査でヘモグロビンの濃度を調べて、成人男性は13g/dl未満、成人女性は12g/dl未満だと鉄欠乏性貧血と診断されます。

【治療と対象】

□治療の基本は『鉄剤』

不足している鉄を補給するため鉄剤を服用します。飲み薬が一般的でサプリメントも推奨されています。飲み薬は1〜2錠を1日1〜2回飲みます。多くの場合2〜3週間で症状は改善しますが、すぐに飲むのをやめてしまうと再発しやすいので、鉄が十分に補われるまで服用を続けていくことが大切です。

月経が原因の鉄欠乏性貧血の場合は、鉄剤を飲むのをやめると再発のリスクが高くなるので、基本的には閉経するまで鉄剤の服用を続けます。

□鉄剤の副作用

副作用はほとんど起こらないと考えられていますが、のみ始めて数日間は、吐き気や便秘、下痢などの胃腸の不調が生じることがあります。便が黒色になることもありますが、気にする必要はないようです。

副作用が強い場合は、飲み薬の種類や服用するタイミングを変えるなどして対応します。

ただし、体内の鉄が過剰になると、肝臓などの臓器にたまって重大な問題が生じることがあります。そのため、鉄剤を使用する場合は、定期的に血液検査を受けて鉄が過剰にならないように確認しながら進めていきましょう。

□鉄不足は食事で対策

鉄不足を防ぐためには、鉄を食事でしっかりと摂ることが大切です。鉄が豊富な食品の代表例はレバーですが、ほかにも鉄を多く含む食品があります。

動物性の食品ではレバーのほかにも、赤身の肉、マグロやカツオ、アサリなどの貝類に多く含まれています。

植物性の食品では、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、切り干し大根、海藻類のわかめ、ひじき、のりに多く含まれ、大豆やゴマも鉄を多く含む食品です。

鉄は吸収されにくい栄養素で、植物性の食品よりも動物性の食品からの方が吸収されやすいとされています。そのためレバーは鉄をとるのに特に適した食品ですが、栄養のバランスを考えると、そればかり食べるのはおすすめできません。鉄を多く含む食品をまんべんなく食べるようにしましょう。

□『隠れ貧血』に注意

体内にある鉄の約7割は、赤血球の中のヘモグロビンに含まれています。残りの約3割はフェリチンというタンパク質と結合して肝臓などに貯蔵されています。鉄をとると、鉄は先にヘモグロビンの成分になるので、ヘモグロビンの濃度が高くなります。

しかし、十分な量をとっていないと肝臓などに貯蔵されている鉄が減っていきます。

ヘモグロビンの濃度が正常でも、肝臓などに貯蔵されている鉄が不足している状態を隠れ貧血(鉄欠乏性貧血)といいます。隠れ貧血は病気ではありませんが、いわば”貧血予備軍”に当たる状態で、そのままにすると鉄欠乏性貧血が起こるリスクが高くなります。

鉄が不足しやすい成長期、妊娠期、授乳期や、月経がある場合は、鉄を含む食品を積極的にとるようにしましょう。

見逃されやすい高齢者の貧血

【加齢による貧血】

貧血は年齢が上がるにつれて増え、75歳以上の人の約3割が貧血か、その前段階にあるといわれます。高齢者の貧血は、腎臓や、血液をつくる骨髄、さまざまなホルモン分泌など、血液をつくることに関わる体の働きが加齢に伴って低下することで起こると考えられています。

□高齢者の貧血は見逃されやすい

貧血のサインには、動悸、息切れ、疲れやすい、顔色が悪い、頭が重く感じられるなどがありますが、特に高齢者の場合、これらのサインに気付かずに、貧血が見逃されてしまうことがあります。貧血があると転倒のリスクが高まります。転倒によって大腿骨や背骨などを骨折すると、寝たきりにつながったり、頭を強く打って深刻な状態に陥ったりする恐れがありますので注意が必要です。

□高齢者の貧血の主な原因

  • 加齢
  • 関節リウマチ、癌、感染症、慢性腎臓病など
  • 白血病、多発性骨髄腫などの血液の病気
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や低用量アスピリンの副作用
  • ヘモグロビンの成分である鉄、赤血球を作るのに関わる葉酸・ビタミンB12の不足

【病気や薬が原因の場合】

□関節リウマチや癌、感染症など

関節リウマチのどの膠原病、肺癌などの癌、肺炎・結核・胆嚢炎などの感染症があると、十分に血液が作られにくくなり、貧血が起こることがあります。貧血の改善にはこれらの病気を治療することが大切です。

また、慢性腎臓病の症状の1つに貧血(腎性貧血)があります。腎臓からは赤血球の産生を促すエリスロポエチンというホルモンが分泌されています。慢性腎臓病が進行するとエリスロポエチンの分泌が低下し、骨髄で赤血球が十分に作られなくなって腎性貧血が起こります。慢性腎臓病で腸からの鉄の吸収が抑制されるため、鉄剤をのんで鉄を補いながら、注射薬や飲み薬で腎性貧血の治療を受けます。

□血液の病気による貧血

血液の病気があると、赤血球が十分につくられなくなったり、つくられた赤血球が壊されたりして貧血が起こることがあります。血液の病気では、赤血球だけではなく、出血を止める働きを持つ血小板、病原体に対抗する白血球にも異常が生じて様々な症状が起こります。

貧血の病気のうち高齢者に多く、重い貧血が起こりやすいのが白血病や多発性骨髄腫です。多発性骨髄腫では、腰痛や背中の痛みも起こります。

□薬による貧血

鎮痛薬であるNSAIDsの副作用で胃などから出血して、貧血が起こることがあります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)には、胃や小腸、十二指腸、大腸に、出血やただれ、潰瘍を起こす副作用があります。心筋梗塞や脳梗塞などを防ぐ効果が期待できるこう血小板薬の低用量アスピリンも、NSAIDsの一種であるため同様の副作用があり、鎮痛薬のNSAIDsと併用しているとさらにリスクが高まります。

高齢になると、腰痛や膝の痛みなどのため、NSAIDsを使う人が増えます。NSAIDsは腎臓に負担をかけ、腎機能を悪化させることがあります。高齢者は動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞などを防ぐために低用量アスピリンを服用する人も増えます。そのため、薬による貧血の発生頻度が高齢者では高くなります。

□鉄や葉酸、ビタミンB12不足

鉄欠乏性貧血は、血液中の鉄に加え、肝臓などに蓄えらている貯蔵鉄が失われて起こります。鉄欠乏性貧血では、鉄剤を服用して鉄を補う治療が行われますが、食事でも鉄を多く含む食品をとるように心がけましょう。

葉酸とビタミンB12は赤血球をつくるときに必要な栄養素です。葉酸は不足しにくい栄養素ですが、高齢で食が細くなったり、過度なダイエットをしていると不足することがあります。ビタミンB12は、胃癌などで胃を切除した人や、胃酸の分泌が減る萎縮性胃炎で不足しやすい栄養素です。葉酸は小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、大豆・大豆製品などから、ビタミンB12は肉や魚介類などからとれます。

”レストレスレッグス症候群”原因は貧血?!

脚の不快感でじっとしていられず眠れないのは『レストレスレッグス症候群』の可能性があります。貧血との関係などお伝えします。

【『レストレスレッグス症候群』の症状】

脚がじっとしていられないという不快感がある場合、鉄欠乏性貧血が原因で起こるレストレスレッグス症候群の可能性があります。

一般には『むずむず症候群』と呼ばれ、『脚を動かさずにはいられない』、脚が『むずむずする』『かゆい』『ほてる』『痛い』『虫が這うような感じがする』『泡立つような感じがする』などの症状が現れます。

重症になると、なんとも言えない不快感を抑えるために『脚の中に手を突っ込んで掻き回したくなる』などと訴える人もいるようです。症状は夜間に起こりやすく睡眠を妨げる要因になるとめ、不安や抑うつなどにつながることもあり、日常生活に支障がでます。

□特徴的な症状

レストレスレッグス症候群には、診断基準にもなっている4つの特徴があります。

  1. 脚の不快感で脚を動かしたくてたまらなくなる
  2. 夕方から夜にかけて症状が強くなる
  3. 脚を動かすと不快感が和らぐ
  4. 座ったり横になってじっとしている状態で起こる

脚の痒みを感じる場合は、皮膚が乾燥したときに生じる表面的なかゆみとは異なり、脚の内部に感じます。症状は毎日起こることもあれば、週に1〜2回、あるいはもっと少ない場合もあります。多くは両足に発症しますが、片方の足だけ現れたり、脚に加えて腕など脚以外の部位に現れる場合もあります。ただし、脚以外の部位だけに起こることは稀です。

□発症率と発症しやすい人

レストレスレッグス症候群の症状のある人は、人口の約2〜5%と推定され、そのうち治療が必要なケースは約1%と考えられています。女性の方が多く、年齢を問わず発症しますが、発症率は加齢とともに上がります。

鉄欠乏はレストレスレッグス症候群の原因の1つとして重要です。また、若年層の患者さんでは、家族に症状がある人が多い傾向があります。そのほか、パーキンソン病のある人、慢性腎不全で特に透析治療を受けている人、糖尿病や関節リウマチがある人、妊娠している人などに多いとされています。

以前は病名があまり知られていなかったために、神経痛などと思われて見過ごされてしまうこともあります。現在は病名が認知されつつあり、正確に診断されることも多くなってきているようです。

【鉄不足とドーパミンの機能障害が原因?!】

レストレスレッグス症候群が起こる原因ははっきりとはわかっていません。しかし、鉄不足や、ドーパミンという脳の神経伝達物質の機能障害などが関係しているのではないかといわれています。

鉄はドーパミンをつくるのに欠かせない物質でもあり、脳内で鉄が不足するとドーパミンの生成に影響します。鉄欠乏性貧血で脳内の鉄が不足していると、ドーパミン神経の機能障害と相まってレストレスレッグス症候群が起こると考えられいています。

【診断と治療法】

□診断

診断で重要になるのが問診です。その症状が先ほどの診断基準に当てはまるかどうかを判断します。家族に同じような症状のある人がいるかどうかも重要な情報です。

さらに血液検査で血液中のフェリチンの濃度を調べます。フェリチンの濃度が低い場合は貯蔵されている鉄が不足した『隠れ貧血』の状態だと考えられます。

□薬物治療

鉄不足が原因の場合は、鉄剤を服用します。原因が鉄不足ではなかったり、鉄剤で十分に効果が得られない場合は、ドーパミンの機能を改善する働きがある薬が使われます。薬には、のみ薬とプラミペキソールと貼り薬のロチゴチンの2種類があります。

ただし、副作用として胸のムカつきや吐き気などの消化器症状が起こったり、薬の量が多すぎるとかえってレストレスレッグス症候群の症状が増強することがあります。こうした副作用や症状の増強を防ぐためにも、適切な治療が必要です。

【日常生活の注意点】

鉄が不足している場合は、鉄を多く含む食品を積極的にとるように心がけましょう。

眠れずに睡眠薬を使う人もいますが、脚の症状そのものが解消されないとなかなか眠れません。

大切なのは夜更かしを避けて、規則正しい生活を心がけることです。再発の予防につながったり症状が軽い場合はこれだけである程度症状が改善することがあります。

日中の適度な運動で夜の症状が和らぐという人もいますが、過度な運動は逆に症状を悪化させることもあるので注意が必要です。入浴や脚へのシャワーが有効だという人もいます。温かいお湯、冷たい水のどちらで症状が緩和されるかは個人差があります。

注意が必要なのは、アルコール飲料とカフェインの摂取です。

アルコール飲料はレストレスレッグス症候群を悪化させる要因になるほか、睡眠の質が低下する原因にもなるので、夕食時の過度の飲酒や、寝る前の飲酒は避けましょう。

コーヒーやお茶などに多く含まれるカフェインのとりすぎも症状を悪化させるだけではなく、睡眠に悪影響を及ぼします。