回転性と浮動性のめまい
めまいは大きく分けて2種類に分かれます。1つは自分自身や周囲がぐるぐる回っているように感じる『回転性めまい』もう1つは体がフラフラしたり、ぐらついたりする『浮動性めまい』です。回転性のめまいは耳の異常から生じやすいとされていますが、実際はめまいの症状だけでは原因は特定できません。めまいの原因は脳や耳の異常、ストレス、睡眠不足、加齢、血圧調整異常など多岐にわたります。最も多いめまいの原因は耳の異常で三半規管や耳石と言う内耳の異常で起こります。この場合は、耳鳴りや難聴を併発することもあります。めまいが起きたときに、特に注意が必要なのは、手足の痺れ、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどの症状が伴う場合であり、脳の異常によるめまいの可能性が高いとされています。この場合は、脳梗塞や脳出血など、一刻を争う場合があるので救急病院などを受信し、専門医の判断を早めに受けるべきです。
最も多いめまいとは?
めまいで最も多い疾患が『良性発作性頭位めまい症』です。耳の奥にある内耳には『耳石器』という、体の位置や直線的な加速度を感じる感覚器があります。その耳石器の一部が剥がれ、体の回転加速度を感じる感覚器である『三半規管』に入り込むことによって起こると考えられています。朝、寝床から起き上がるときや、頭を動かすときに、回転性のめまいが起こります。めまいの持続時間は1分以内のことが多く、安静にしていると治ります。めまいは繰り返しますが、2週間〜1ヶ月くらいで自然治癒するケースがほとんどです。
内耳が浮腫むメニエール病
良性発作性頭位めまい症の次に多いのが『メニエール病』によるめまいです。メニエール病は、内耳にあるリンパ液が増えて、むくみ(内リンパ水腫)を起こした病態を指します。ただ、むくみの根本的な原因はわかっていません。めまいや吐き気のほか、耳鳴りや難聴、耳の閉塞感といった症状が現れることがあります。めまいの持続時間は数十分から数時間と比較的長いのが特徴です。また再発や、聴力の悪化などもあり、なかなか治りづらいケースも見られます。
メニエール病の診断基準
A症状
1 めまい発作を反復する。誘因なし、めまいの持続は10分程度から数時間程度。
2 めまい発作に伴って難聴、耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状が変動する。
3 聴神経以外の神経症状がない。
B検査所見
1 聴力検査で感音難聴を認める。めまい発作に関連して聴力が変動する。
2 めまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振(眼球が反復して動いている)などの所見を認める。
3 神経学的検査においてめまいに関連する聴神経以外の障害を認めない。
4 メニエール病の類似した難聴を伴うめまいを呈する原因の既知を他の疾患が除外できる。
5 聴覚症状の耳に造影MRIで内リンパ水腫を認める。
C診断
メニエール病確定診断例 A症状の3項目を満たし、B検査所見の5項目を満たしたもの。
メニエール病各実例 A症状の3項目を満たし、B検査所見の1〜4の項目を満たしたもの。
メニエール病疑い例 A症状の3項目を満たしたもの。
治療法とセルフケア
良性発作性頭位めまい症の治療
良性発作性めまい症は、自然治癒する病気です。ただ、それまでの間、症状をできるだけ軽減したい場合は薬物療法を行います。また、三半規管に入り込んだ耳石器の一部を正常な位置に戻す『耳石置換法』という治療法があります。耳石置換法は、医師の指導により、ベットの上で横になり、頭を動かすことによって耳石を動かします。自宅でやるリハビリ治療として、めまい体操なども有効とされています。
睡眠と適度な運動を心がける
めまいは睡眠不足や過労、ストレスが引き金になることがあります。十分睡眠を取り、心身を休めることを心がけましょう。ストレスを完全に無くすことは難しいですが、無理をせず、困ったときは相談するのも1つの方法です。また、ウォーキングなどの適度な運動は血流を促進し、内耳にも好影響を与えることが期待できます。逆に喫煙は血流を悪くするので控えましょう。
メニエール病の治療
メニエール病は、内耳にあるリンパ液が増える病態であるということ以外、病因が明らかになっていません。メニエール病と診断されたら、薬物療法による対症療法が中心になります。内リンパ水腫の改善のためにイソバイドという浸透圧利尿薬の内服、内耳循環改善薬、ビタミンB12などステロイドを使用することもあります。ひどい発作が起きたときは、点滴または注射を行います。利尿効果を目的として、水分を普段より多めに摂るという飲水療法をすすめている病院もあります。
メニエール病はストレスに注意
メニエール病の発作は、ストレスや心身の疲労が蓄積するほど起こりやすくなります。特にストレスは大敵となるので、日常生活では無理をせずリラックスすることを心がけます。また、十分な睡眠と、栄養バランスの取れた食事をとり、規則正しい生活を送ることも大事です。
また、スマホや本の見過ぎ(目を上下に動かす)、高音量でのイヤホン、ヘッドフォンの使用にも注意が必要です。