痛みの原因?!『ファシア』について

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ファシア(筋膜)とは?
ファシア(Fascia)は、全身に広がる結合組織で、筋肉、骨、臓器、血管、神経などを包み込み、つなげている薄い膜です。一般的には「筋膜」という言葉で知られていますが、筋肉だけでなく、全身のあらゆる構造をサポートし、統合する重要な役割を果たしています。ファシアは、コラーゲン、エラスチン、基質(プロテオグリカンや水分を含む物質)で構成され、これらの成分が柔軟性や強度、滑りやすさを提供しています。

ファシアの構造
⁡ファシアは、主に以下の3層に分類されます:
1. 浅層ファシア(Superficial Fascia)
皮膚のすぐ下にあり、脂肪や水分を蓄える役割を果たします。この層は、体温調節や衝撃吸収の機能を持ちます。
2. 深層ファシア(Deep Fascia)
筋肉や骨を包み込む層で、筋肉同士が滑らかに動くようサポートします。この層は特に重要で、全身を連結し、筋膜のネットワークを構成します。
3. 内臓ファシア(Visceral Fascia)
内臓を包む層で、臓器同士が適切に位置を保ちながら動けるようにしています。また、内臓を保護する役割も果たします。

 

ファシアと水素結合の関係

ファシア(筋膜)と水素結合の関係は、ファシアがどのように柔らかさや強さを保ちながら、体を支えるのかを理解する上で重要なポイントです。簡単に言うと、水素結合はファシアの構造を形作り、それを柔軟で安定した状態に保つ「接着剤」のような働きをしています。

ファシアは「柔らかさ」と「強さ」の両方を持つ必要があります。その秘密が、ファシアを構成する分子同士をつなぐ「水素結合」にあります。

水素結合とは?

水素結合とは、分子同士が「手をつないで」引き合う力のことです。たとえば、水の分子同士も水素結合でくっついています。この結合は強すぎず弱すぎず、柔軟な動きが必要な場所で特に役立ちます。

ファシアの中での水素結合の働き

ファシアを構成する主な成分と、それぞれにおける水素結合の役割を見ていきましょう。

1. コラーゲンと水素結合

コラーゲンはファシアの中で一番重要な材料で、強くてしなやかな繊維です。このコラーゲンは、「三重らせん」というねじれたロープのような形をしていて、その形を保つために水素結合が必要です。

水素結合の役割:コラーゲンの繊維をしっかり固定しながら、適度な柔軟性を持たせます。これにより、ファシアが引っ張られたり動いたりしても壊れません。

2. ヒアルロン酸と水素結合

ファシアの中には、水分を多く含むゼリー状の物質(ヒアルロン酸やプロテオグリカン)もあります。これが潤滑油のような働きをして、筋肉や組織同士が滑らかに動くのを助けます。

水素結合の役割:ヒアルロン酸と水分が水素結合を作ることで、ファシアが潤いを保ち、動きやすくなります。

ファシアが硬くなる原因と水素結合の関係

ファシアの健康が損なわれると、水素結合にも影響が出ます。ファシアが硬くなると、動きが悪くなり、痛みの原因になることがあります。その原因と水素結合との関係を説明します

1.水分不足

ファシアは水を多く含む組織です。水分が不足すると、水素結合が弱まり、ファシアが硬くなります。これが筋肉の動きを妨げる原因になります。

2.加齢

年を取ると、ファシアのコラーゲンやヒアルロン酸が減少し、水素結合も弱まります。その結果、柔軟性が失われ、関節や筋肉が動きにくくなります。

3.ストレスやケガ

ストレスやケガでファシアが傷つくと、水素結合が乱れ、組織の滑らかさが失われます。この状態が続くと、ファシアが硬くなり癒着することがあります。

ファシアと水素結合を健康に保つ方法

ファシアを柔らかく健康な状態に保つためには、水素結合を活性化することが重要です。その方法を具体的に見てみましょう

1.十分な水分補給

ファシアが潤うためには水分が欠かせません。1日2リットルを目安に、こまめに水を飲みましょう。

2.適度な運動とストレッチ

体を動かすことで、ファシア内の水素結合が刺激され、柔軟性が保たれます。特にストレッチやヨガは効果的です。

特に呼吸を吐くときに伸ばすのがポイントです。

3.栄養の摂取

コラーゲンを増やすために、ビタミンCを含む食品(オレンジやピーマン)や、ヒアルロン酸を多く含む食品(鶏皮、納豆)を取りましょう。

4.ローリングやマッサージ

筋膜リリース用のフォームローラーやボールを使ってマッサージすると、硬くなったファシアを柔らかくし、水素結合の働きを助けます。

5.休息とリラクゼーション

十分な睡眠やリラックスは、ストレスによるファシアの硬化を防ぎ、水素結合を整える助けになります。

ファシアの役割
ファシアは単なる「膜」ではなく、以下のような多くの重要な機能を果たします
⁡1. 全身をつなぐネットワーク
⁡ファシアは全身に連続して存在し、「身体を統合する構造」として働きます。これにより、一部の体の動きが他の部分に影響を及ぼす仕組みが生まれます。たとえば、足首のファシアが硬くなると、その影響が膝や腰に及び、全身のバランスが崩れることがあります。
⁡2. 動きの滑らかさを助ける
⁡筋肉同士や筋肉と骨が滑らかに動けるよう、ファシアは摩擦を減らし、潤滑の役割を果たします。この機能が失われると、筋肉のこわばりや関節の可動域制限が発生します。
⁡3. 体の形を保持する
⁡ファシアは、骨や筋肉を正しい位置に保持することで、体の形を支えます。特に深層ファシアは、体の「フレーム」として機能します。
⁡4. 神経と血管を保護・サポート
⁡ファシアには多数の神経や血管が通っています。そのため、ファシアの柔軟性が失われると、これらの機能にも悪影響を及ぼすことがあります。血流の滞りや神経の圧迫は、慢性的な痛みや疲労の原因となります。
⁡5. 外部からの衝撃吸収
⁡ファシアは体に加わる力を分散し、衝撃を吸収します。これにより、骨や内臓へのダメージを軽減します。

ファシアの健康状態が与える影響
⁡ファシアが柔軟で滑らかな状態にあると、体はスムーズに動き、痛みが少なくなります。しかし、以下のような要因でファシアが硬くなると、体の動きや健康に悪影響を及ぼします
⁡ファシアの硬化の原因
1. 運動不足や同じ姿勢の継続
長時間のデスクワークや運動不足は、ファシアの柔軟性を失わせます。特に深層ファシアが硬化しやすくなり、筋肉の可動域が制限されます。
2. ストレスや過剰な緊張
精神的ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、ファシアが硬くなる原因になります。これにより、慢性的な痛みや疲労を感じやすくなります。
3. ケガや炎症
ケガや手術後の傷跡は、ファシアの癒着(アドヒージョン)を引き起こすことがあります。この癒着により、筋肉や関節の動きが制限される場合があります。
4. 加齢
年齢とともにファシアの水分量が減少し、硬くなりやすくなります。これが原因で関節の硬直や柔軟性の低下が生じます。

ファシアの健康を維持する方法
⁡1. ストレッチや適度な運動
ヨガやピラティスは、ファシアを柔軟に保つのに効果的です。全身を使った動きが、ファシアの滑らかさを維持します。• 動的ストレッチ(動きながら筋肉を伸ばす運動)を取り入れると効果的です。
⁡2. ローリング器具の活用
フォームローラーやボールを使ったセルフマッサージは、ファシアの癒着を解消し、血流を改善します。 特に痛みやこわばりがある部位にローリングを行うと効果的です。
⁡3. 十分な水分補給
ファシアは水分を多く含む組織であるため、体内の水分量が不足すると硬くなりやすいです。適切な水分補給は、ファシアの柔軟性を保つために重要です。
⁡4. マッサージや整体
 プロのセラピストによるマッサージや整体は、ファシアの健康をサポートします。ことのきに大切なのが刺激の強さです。強い刺激でアプローチをすると筋組織は壊され、ファシアは余計に硬くなってしまいます。特に長年の慢性的な不調がある場合、強い刺激を好んでしまう傾向にあります。ファシアの仕組みを理解した専門的な施術が有効です。
⁡5. 正しい姿勢の維持
 悪い姿勢はファシアに不必要な負担をかけます。日常生活で正しい姿勢を意識することで、ファシアへのストレスを軽減できます。
⁡6. 適度な休息と睡眠
 十分な休息は、ファシアの回復と再生を促します。睡眠中には身体が修復されるため、質の高い睡眠が重要です。

ファシアと痛みの関係
⁡ファシアの硬化や癒着は、慢性的な痛みの原因になることがあります。たとえば:
 肩こりや腰痛
ファシアが硬くなると、筋肉の動きが制限され、緊張が生じやすくなります。
 筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome)
ファシアに「トリガーポイント」と呼ばれる硬いしこりができることで、広範囲の痛みを引き起こします。

ファシア研究の最新トピック
⁡近年の研究では、ファシアが単なる構造的役割以上に、体の感覚や免疫機能にも関与していることが分かってきました:
1. ファシアの感覚受容器
ファシアには多くの感覚受容器があり、痛みや圧力を感じる機能があります。このため、ファシアの硬化が体全体の痛みにつながる可能性があります。
2. ファシアとリンパ系
ファシアはリンパ管と密接に関連しており、免疫機能にも影響を与えます。ファシアが硬くなると、リンパの流れが滞りやすくなり、免疫力低下の原因になることがあります。

ファシアは全身の健康を支える基盤であり、その柔軟性と健康を維持することが、痛みの予防や体のパフォーマンス向上に役立ちます。日常生活で意識的にケアを取り入れることで、全身の調和と健康を向上させましょう。